1人が本棚に入れています
本棚に追加
全員がリビングに集まっている。女性四人は深く呼吸をしている。ケンタとヒロトは立ったまま、ソファーにももたれ掛かっていた。
ナオコ「あれ・・・本物かな・・」
ケンタ「初めて見たよ、俺」
シズカ「ちょっと!やめてよ!誰かのイタズラでしょ、どうせ」
アケミ「でも私たちだけしかいないんでしょ、誰がそんなことできるの・・」
シズカ「あの人じゃない?オーナー?ああやって客をびびらせてるんでしょ?」
ヒロト「いや、そんなことする人に見えないけどなあ・・」
ハルナ「私・・見ちゃった・・・」
ヒロト「何を?」
ハルナ「顔・・・見ちゃった・・」
その瞬間、ハルナの視界には、目を見開いて見つめる全員の視線があった。
ケンタ「ま、マジかよ!」
ナオコ「本当に?」
アケミ「どんな顔してた?」
皆がハルナに問い詰める中、シズカがハルナの肩を両手で押さえた。
シズカ「ハルナ・・・あのおじさんでしょ?」
ハルナは、ゆっくりと、顔を横に振った。シズカは手の力を緩め、床にへたり込んでしまった。
ハルナ「知らない顔、間違いなく、女の人だった」
シズカはこらえ切れず、ケンタに抱きつき、涙を流し始めた。
アケミ「どうしよ・・」
アケミは、ヒロトの顔を見た。
ヒロト「まあ、中に入って来るわけでもないし、ここで様子を見よう」
ケンタに抱きしめられていたシズカが、ゆっくりと顔を上げた。
シズカ「そんな、ねえ、誰か、オーナーのところに行ってよ」
ナオコ「いやだよ!あの幽霊の横通らなきゃならないじゃん」
ヒロト「それに、あのおじさん寝てるかもしないし」
ケンタ「そうだよ、朝まで待とう」
シズカ「いやよ!そんなことしているうちに、あの幽霊が入ってきたらどうすんのよ!」
アケミ「そんなに言うんだったら、あんたが行けばいいじゃん」
ケンタ「みんな、やめろよ、シズカ、朝まで一緒にいるからさ、な・・」
皆が話し合っている中、ハルナは、アケミの袖を引っ張った。
ハルナ「アケミ」
アケミ「ん?何?」
ハルナ「トイレ・・一緒に行かない?」
アケミは大きくため息をついて、ハルナの手を取った。
ヒロト「おい、どこ行くんだよ?」
アケミ「トイレ」
最初のコメントを投稿しよう!