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僕が彼女と初めて会ったとき、僕は日常のとおり眼鏡をかけていた。
ふだん何してるひと?
会社員。
で?
コンピュータプログラムを作ってる。
へぇ。営業みたいなこともするんでしょ?
たしかに。すごく必要。かも。でも僕はそこを諦められている。プロモーション能力を磨けない。
それできないと、そのお仕事つらくない?
どうだろ。きっとね。でもいま僕のいるところは得意ジャンルだけで十分やっていける。周りがいいんだ。すごく。
あ、そう。。。よかった。私ね、宣伝能力に長けているひと、営業能力に長けているひとに友達少なくて。
?
マイナスなことを言うくせがなかったり、マイナスなことを聞くことがニガテなひともいるでしょ?仕事上でマイナスなことを聞くだけでいっぱいいっぱいになったり。ところで、メガネ外せる?
平気だよ。看板メニューが見づらくなるくらい、そんなに目わるくないから。
なるほど。
眼鏡なしの僕の顔を見て、彼女はいった。
僕のクセなのか、きづいたら僕は眼鏡をかけていた。
彼女の眼鏡に関する話はその後に聞いた。
暇つぶしだったのか。
僕らはお互い、ほとんど何もそれ以上会話をしないまま、情報を得られないままだったと思う。
暫くそこに2人でいるのに。無拘束のままいたのに。
あなたのほんとの顔が分からない。
きみの考えていることが分からない。
それは彼女が、僕に興味を持ってないから。
フリッパーズギターの、カメラ!カメラ!カメラ!という曲を思い出した。
レンズごしに見ている彼女(被写体)との物語。レンズから離れて、まもなく変わる彼女との世界。
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