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スキール音がけたたましく泣きわめき、ボディが真横に向く。
全開から荷重を乗せて食わせるアクセルワークに切り替え、フルカウンター。
「留まれェッ!!」
200km/hオーバーで横を向くのは分かりやすい死が鼻先に居るような恐怖以外何物でも無いが、リオは笑っていた。頬が緩んでいた。
五速、四速。追加された油圧ハンドブレーキを引き、フートブレーキを思いっきり踏みつける。リヤが沈み、ABSがペダルを揺らす。
「よし……。よし、良い子だ」
フロントタイヤが食いついた。三速に叩き込み、ホイールスピンさせながらリヤタイヤを食わせる。
あたしは生きているぞ。いつの間にか前に居るF50のテールは十分に射程圏内。トラクションは十分に掛かる。
「行くよF2!!」
スッとボディがまっすぐを向く。四速、五速。ドラフティングに入る。
ステアリングのスイッチを押した。ナイトロシステムの起動。ボンネットから吹雪のような真っ白な煙が上がった。
亜酸化窒素が噴かれたのはインタークーラー。正確には水冷インタークーラー用ラジエーターである。圧縮空気が気化した亜酸化窒素により冷却水を通じて一気に冷やされ、より密度が高くなってシリンダーに押し込まれる。
吸気温センサーが圧縮空気の温度が下がって密度が高くなったことを感知し、CPUはより多くの燃料をシリンダーに吹き付ける。
さらにメインラジエーターにも亜酸化窒素は噴かれ、冷却水がエンジンから拾った熱を奪い、点火時期の遅角を許さない。
準備は万端。スロットル開度100%。
霧のような帯をフェンダーダクトから引きながら、まるで吸い寄せられるようにF50を捉え、コーナーを目前に並びかける。
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