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俺の部屋には開かずの間がある。誰かが住んでいたような痕跡があるのに誰も知らない。
「大掃除するから片付けてくれる歩?」
「どこから手をつければいいんだ、これ」
埃がかぶっているわけではないのだが、本が山積みだ。知らない本ばかりが本棚に入っている。
「日記まで書いてたのかよ、俺にはできねえ」
日記とは心の中のものをさらしていたりするもので、まるで隣人の部屋を小さな穴から見るような気持ち。だが、その日記には鍵がついており、ひとまず置いておく。
机の中を探ると鍵が入っていた。
「香だし、別にスーツだけ変えればいいだろ。だいたい、いきなり泊まりにくるってなんかあんの?」
「お父さんが仕事で忙しいから預かってほしいみたい」
香とは歩と同じ高校二年生で、父が警察官、両親が知り合いのため影内家に預けられることがよくあった。香は優等生で、俺は中身が子供のままといわれる奴といるのは不思議とみられる。
インターフォンが鳴る。玄関に出ると少し大人びた香が立っていた。
「久しぶり歩」
香が使う部屋に行き、先ほどの日記を見せる。
「今からこの日記を見てやろうかと」
「ほんと何か企んでいる時って人一倍楽しそうな顔するよね」
「誰だってそんなもんだろ」
「歩は人一倍って話だよ」
鍵穴にさして回せば簡単に開いた。
12月1日
俺の前に知らない金髪の男が現れた。
その男は俺をゲームのプレイヤーらしい。今から俺の命を狙う奴をどう殺すか話し合おうと言ってきた。
信じられず逃げるがアイツは家にやってきた。何故か家族も知り合いのように話していた。
俺は知らないのに。
12月2日
起きても夢ではなかった。おはようと言ってくるそいつの名前はクウらしい。話を聞けば本に書かれたことを叶えればいいらしく同じクラスの山口が今日死ぬらしい。これを回避すればいいようだ。
山口の家に行ってみる。ちょうど向こう側から歩いてきたのでちょうどいい。しかし、その直後山口の頭上から植木鉢が落ちてきた。クウが守ってくれたから死なずに済んだが、死んでいたらと思うと怖い。
歩は日記を閉じ、香を見た。香は特に驚いた様子もなく興味が出ているようだ。少し変わった奴だと思う自分もたいがいだが、今は少し心強く感じた。
この時はまだ香のもう一つの顔に気づけず俺は再びページをめくるのだった。
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