日めくり

1/2
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ

日めくり

 今年は仕事が忙しく、大掃除どころかろくに正月支度もできないまま大晦日を迎えてしまった。  いつもよりは結構早いが、それでもとっぷりと日が暮れてから独り暮らしのアパートに帰りつく。  本当に何一つ用意をしていないが、明日にはもう年が明けるのだ。  とりあえず、明日から五日ばかり休みになるので、掃除も何もかも休日にするとしよう。  そう思い、コンビニで買ってきたインスタントの年越しそばを食べて、早い時間に眠りについた。  その翌朝。  八時を少し過ぎた頃に何度も何度も着信があり、俺は眠い目をこすりながら電話に出た。  せっかくの休み、それも元旦から何の用だ?  不機嫌な気持で相手の話に耳を傾ける。するとスマホの向こうから上司の怒鳴り声が聞こえた。 「おい! 仕事納めに何遅刻してるんだ! さっさと出社して仕事を片づけろ!」  頭ごなしに叱りつけられ、俺はスマホの日づけを確かめた。  間違いなく一月一日だ。なのに仕事?  正月早々、上司が性質の悪い冗談をかましてきたとしか思えない。でも確か昨日聞いた話では、上司は年明け早々実家に帰省することになっている筈だ。俺にイタズラ電話などしている暇があるのだろうか。  気持ちを落ち着けようとテレビをつけてみる。途端、画面には信じられない光景が広がった。  帰省ラッシュで込み合う駅の構内映像。画面には、師走最後の日の混雑というテロップまでが流れている。  これは何の冗談だ?  もうとっくに年は明けている。その筈だ。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!