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「色々と見てきたけれどここまで気色の悪い虫を見たことがない」
葉月は吐き出すように言った。
そうこうするうちに地上が騒がしくなる。
部隊がやって来たのだ。
ふたりはもうここに必要がない。
「ミサ、帰ろう」
葉月はミサを促した。
ここに居てもどうにもならなかった。
ミサは気の抜けた顔でふらふらとしていた。葉月は心配はしたがこのような現象は稀にある。自分も言わないだけで悪夢は見ていた。
葉月の身内は全部死んだ。ゾンビに駆逐されて帰らぬ人となった友達もいる。それがこの地球の現実だと自分を洗脳するように生きて十年になる。
平本に引き取られたときは生きる意味さえなかった。自分の存在すら否定した。只、同じく引き取られた仲間の存在が葉月をこの道に引きずり込んだことも確かであった。
ゾンビを破壊し、研究する組織を知り、隊員に志願した。ワクチンの接種に成功し、戦闘技術を学んだ。
組織の全てを知って理解したあとは、ゾンビを退治する任務に没頭した。
その一年後にミサが組織にやって来たのである。
平本の家に居たときから大人しかったミサが望んで組織に来るとは意外であった。
一年ぶりのミサは変わっていた。
前向きな考えと行動力を身に付けていた。
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