二章 調査

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葉月は視線を上げた。 「情報が早いね。諜報員とでも手を組んだのか?」 「なんでもさ。特区の扉から侵入したそうよ」 ママは独り言のように言う。 「もう少し詳しい話が聞きたいんだが」 「反乱軍のひとりというだけで性別はわからないそうよ。月一回物資搬入のどさくさに紛れてのことだったみたいね。厳重チェック用のスキャナーの調子が悪かったそうだけれど監視員が手を抜いたんじゃないかって騒いでるらしいわ」 「メリッサが不調かい。初代ローズはもっとやばかったけれど」 葉月は特区に侵入した日を思い出した。 ゾンビ化した人間やそれに感染したと思われる人々を収容した隔離スペースはデッドラインの端にある。 平本の屋敷は特区の途中に建てられていた。その日、平本が学会で留守であることをいいことに葉月は隼人と佑真を連れて屋敷の外へ出た。そのときは特区の意味も理解せず、ましてやそこへ辿り着く道も知らなかった。ただ最新式のチェックコンピュータローズの存在を一目見たかっただけだと言える。 チェックコンピュータの開発が進んでいた十年前、葉月の興味はそこにあった。朝早くに屋敷を抜け出し、獣道を三人で歩いた。 広大な森は焼けた幹ばかりが目立つ。足元は草だらけであった。 ひたすらに歩いた先に見えてきた城壁と門の周囲にはアンドロイドが蠢いていた。
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