三章 A305

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ミサは先に生物兵器監査連邦の会議室に先に来て、読める資料に目を通していた。 資料の分厚さに目眩がしたがここをクリアしないことにはA305の所在も成分もわからなかった。 葉月が来るまでになんとか読みほどこうとするのだが無駄な暗号文がどうにも読む意識を妨げてくる。 足踏みしながら読み進め、A305が、単純に実験回数であることを理解した。しかしそれがどうしたとあとから来た総長のマグリッドは笑った。 「マグリッド総長、そんなに笑わないでください。昨日もその前も別件で忙しかったんですから」 「そうだったな。悪い悪い。怒るな。寝不足もストレスも何倍にもなる」 いい加減なことをいい放ち、資料を手にしたマグリッドは笑うことをやめない。 「犯罪が起きなければ私は眠れるんですけれど」 ミサは面白くもなんともない。不機嫌に資料をめくった。 「それは何時の世も変わらないと思うなあ」 総長が椅子に腰かけてページを捲る音が響いた。 「葉月の資料は何時だって読みにくいんだから」 「調査部隊の資料は難しいな」 ミサと総長は交互にいった。 「夕霧博士の素性は謎なのですよね」 「そうだな。月へ逃げた。これが最後の目撃情報だ」 「月ではなにがどうなっているんでしょう?」
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