三章 A305

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「なにがあるというの」 ミサには何も思い付かない。 モカのことを世間に流す理由がわからなかった。 「今はまだ分からない。ただ特区の調査はすることになる」 「無駄よ。今さっき許可は降りないと言われたばかりだもの」 「それでも調べないことには何もわからないだろ」 「私たちの仕事ではないのよ。そう言うことは」 ミサは葉月が心配だった。隼斗もそうだったがなにかと危険に足を踏みいれる。これ以上知人を失いたくはなかった。 「大丈夫。調査部隊の面子に知り合いがいるんだ。そいつから情報を貰うよ」 「それは公約違反でしょう」 ミサは葉月のことを見返した。 葉月はいつもと変わらない。 どこかで安心したミサが居る。 「そうでもしないと真実は闇のなかだ」 「それはそうだけど」 葉月のいうことはもっともであった。 政府は色々と隠している。 「一応、資料は読んだんだろ?」 ミサは頷く。 「A305は夕霧博士が作った虫で、危険度S。攻撃は焼き払うしかないということは理解したよ」 「俺たちはワクチンが効いている。そういった人間には害がないと言われているがくれぐれも注意が必要だ。大体、死んだあと気体が発生するという時点で驚異だ。吸い込んで肺に入ったら内部から腐るんだぞ。考えるだけでおぞましい」
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