三章 A305

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「お、葉月。ちょうどよかった」 マグリッドが追加の資料をもってきた。 「マグリッド総長。ママが会いたいって」 挨拶もそこそこに葉月は言った。 「なんだ。飲んでたのか」 「俺、非番ですよ。飲んでてもおかしくないと思います」 「非番か、またどこかで混乱が起きるかもしれないと監査本部からこれが送られてきた」 マグリッドが資料を机に置いた。 かなりの分厚さであった。 「そんな。平本博士のことも終わってないのに」 ミサは項垂れたが事件や混乱は待ってはくれない。その道の諜報部員が厳選された噂と事実を運んでくる。ミサたちはその要請に応じて現場に向かうのだ。 「東のヨトルですか。源馬研究員が居るところですね。あそこにも生物兵器製造場があることは知っていますが。ヨトルの監視員はユリアと陽介ではありませんでしたか?」 「二人では厳しいだろうという話もあってな。葉月にも出向いてもらいたい」 「わかりました。ユリアたちは?」 「もう準備に入っているよ。まだ混乱は起きないが早めに現地入りしてくれ。テロの可能性もある」 「了解」 葉月は資料を握るように掴むと会議室を出て言った。 ミサは葉月の背中を見送る。
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