四章 ヨトル街

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葉月はユリアと陽介とともにヨトル街を目指していた。移動手段は四駆車である。四駆車のタイヤが大地を削るような音を永遠響かせている。途切れることを知らない音は暗闇に反響した。ハンドルを握る葉月が後ろに居て武器のメンテナンスをするふたりを気にしていた。ユリアと陽介は配属されて日が浅い。西区を担当していたときは仕事内容を評価されていたが、葉月が属する総本部に来てからは実績を取れていなかった。ユリアはともかく陽介は焦りすぎている。最近その傾向が強くなった。 西区と総本部では仕事内容が違いすぎる。西区では巣窟を潰せば収入となったが、総本部は調査もはいる。葉月が平本の手記を見付けたように手がかりを発見して報酬額が変わる。巣窟を潰しただけでは小遣い程度にしかならないのだ。これは生物兵器監査連邦が定めた給料制だった。それでも設備はすべて無料なので生活には困らない。 心配なのはユリアと陽介が現場で命を落とすことだった。葉月の同期は数年前に何人か死んだ。ゾンビの奇襲を受けたのだ。珍しいことではない。それでも逃げ切れずに殺された。葉月が生物兵器監査連邦に入って直ぐのことだった。それからはゾンビ化したモノはすべて壊すことにしている。
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