四章 ヨトル街

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ゾンビ化を戻すためのワクチンがあるならば話は別だったが今のところ開発が追い付いていない。ワクチンの種類も数万を越えている。生物兵器監査連邦に所属する人々はそれらに適用しているということだ。 ワクチン切れが起きないように夜に数袋の錠剤と年に三回点滴がなされる。 上層部となると平社員のワクチン摂取量など可愛いもので、毎晩なにかしらの方法で摂取している。しかし人間も馬鹿ではない。最近では複合型ワクチンの製造が盛んに行われている。その実験材料となるネズミを飼育している場所があるくらいだ。現在の地球は生物兵器を完成させることとそれを食い止めることに必死なのであった。 ヨトル街はその聖地である。日本にあってアメリカとの連携で動いている。そのネットワークの中心だ。ネズミ農場とあからさまに書かれた看板を通りすぎ、石でできた街並みを東に走ること数分。目的地は見えてきた。樹に挟まれた細い道を進む。 依頼を受けたのは宮守の研究所だ。平本の屋敷より規模がある。中庭には四棟の建物が方位に合わせて置いてある。研究所としては珍しくない造りであった。裕福な研究所は綺麗なアシンメトリーを基準として作られている。
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