四章 ヨトル街

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源研究員が言った。 「その件はユリアと陽介から聞いてるよ。変なやつが押し入ったって言うんだろう」 「マウスだけじゃない。虫や植物にも影響がでている。あちらこちらで不可解な窃盗事件が起きてるんだ」 「そんなに盗まれたのか」 「本来、窃盗は警察に被害届を出すのだけれど。宮守博士がなんだかおかしいと言い出してね。生物兵器監査連邦に急遽依頼したんだ」 「他にこの件について疑問視している人はいるのか?」 「俺を含めて数名。あとは宮守博士と協定を組んでいる場所のオーナーたちかな。相当ピリピリしているよ。せっかく復活させたものを盗まれるとか最悪だろう。こっちはそれで生活してるんだから」 「それはそうだ。もっと詳しく教えて貰えるか?」 「現場に案内するよ。こっちだ」 源研究員が勧めるままに葉月たちは続いた。 狭い廊下は大人が並ぶとさらに狭くなる。廊下が狭い変わりに研究室は広びろとしている。扉は最新式の施錠がされており、内部の人間でなければ開かないよう厳重に管理されている。 源研究員に案内された部屋に入ると空のケースが幾つも並べられていた。透明なケースには生物が居た形跡だけが残っていた。 ユリアと陽介がケースに寄っていく。 「盗まれたのか。これ全部」 葉月は聞いた。
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