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「手口が鮮やかすぎて俺らにはどうすることもできなかった。そいつらはアカシアと名乗っていたよ」
「犯人を見たのか?」
「覆面を被った五人組で、メンバーのひとりが薬指のない男だった」
葉月は頬をひきつらせた。
「なんだって?」
「驚くだろ? 負傷した人間が多いご時世とはいえ、薬指一本でまともな男って」
葉月はメモを取った。これは偶然であろうかと思いながらもそれ以上は口にせず頷くにとどめた。先程聞いたばかりの男がなにゆえそんなことをしているというのだろう。
「アカシアか、了解。こちらでも探してみるよ」
男よりも今はアカシアの存在であろう。窃盗事件を辿ることでなにかしら見つかるものである。
葉月は源研究員に言って宮守博士に話を聞けないかとたずねた。
「明日なら対応できると思う。滞在場所が決まっていないなら部屋を貸すよ」
源研究員の提案を葉月は飲んだ。
ホテルなどただのぼったくりである。
案内された部屋で作戦を練ること数時間。
ユリアがベッドに座ったままなやむように唸った。
「アカシアなんて組織の情報、どこにもないね」
開いたパソコンにアカシアのデータはなかった。植物の説明で埋まっている。
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