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「葉月は何を考えてるの?」
ユリアが問われて葉月はママから聞いた男ふたりのことを告げる。
ユリアの表情は変わらなかったが陽介は違った。
「それって、アカシアの?」
「可能性はあるんだよな」
葉月は大袈裟に頷いた。
「薬指のない人間がそんなにたくさんいるとは思えない。アカシアに間違いないと思う。でさ、葉月さん。明日の宮守博士との会談のあと事件現場を回ることになるんだろう。分担した方が早いと思うんだ」
陽介の提案に葉月は不安を覚えた。
「危険に巻き込まれそうになったら逃げる。深追いせずに連絡を取る。それなら構わないよ」
陽介はすぐに承諾した。
ユリアはパソコンに地図をアップする。
ヨトル街の地図が縮小された。
「被害情報も伏せられてる。これじゃあどこに盗みに入ったか分からないね。すべては明日か」
「俺は少し寝るよ」
陽介が欠伸した。
「じゃあ葉月、私と食事にいこう」
ユリアがベッドを降りた。
2
翌日になる。昨日はヨトル街を散策して終わった。
食事どころを見付けるまで時間が掛かったこともあって葉月は欠伸を噛み殺した。
宮守の研究所に戻ったのが深夜なのだ。観光都市でもあれば良かったが、ヨトル街は研究の街だった。
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