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彩香が悲鳴をあげた。自分も腐れていることを忘れている様子だった。いよいよこの場に正常と言う言葉は無くなった。
「どうしようもない。外に連絡を取れないようにしたのは俺達だもの」
隼人は冷静に返した。
広間の扉を封鎖したのは他ならぬ四人であった。生物兵器から逃れるためであったが、それが逆効果だった。
四人は死を待つだけであったといえる。
「どうしようもないの、かな」
彩香が言うなり、佑真に飛びかかった。言葉と行動さえ噛み合わない。
隼人は傍観するしかなかった。
モカが隼人の膝から逃げ出した。向かった先は閉じられた扉である。猫専用の入り口からするりと抜け出した。猫にはこの事態などどうでも良いのだろう。だんだんと消える意識のなかで隼人は思い人の姿を見ていた。
(ミサ。ごめん)
黒い髪の毛、勝ち気な瞳。当事十歳の自分と彼女。平本の家に引き取られて育った記憶は思い返されては消える。
この屋敷に引き取られた四人に親はいない。政府が両親たちを連れ去り、生物兵器の研究室をさせている。
隼人もその事に詳しくはなかったが、ミサが生物兵器関連の職場に行っている。
(もう一度、会いたかった)
気力薄れかけていく最中、爆発音と熱風が広間を襲う。
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