四章 ヨトル街

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宮守の他にも研究所が並んでいて、どれも同じ構造をしているのだ。夜では見分けがつかなかった。それが大幅に夕食をずらしたのである。朝食は源研究員に教えてもらった店で済ませた。客は朝から詰め掛けていた。用意された朝食はサンドイッチとソーセージ二本にスクランブルエッグだ。コーヒーとサラダとヨーグルトはバイキングになっている。中央都市から離れてこのボリュウムが維持できるのは、ヨトル街の中心に飛行機の離陸場があるからだ。物資が豊かということは外交も順調である証拠でもあった。それなりの朝食に満足した三人は、宮守博士との会談を待っていた。 源研究員が案内してくれた小部屋で宮守博士を待つこと二時間。漸く、宮守博士が現れた。 白髪、中肉中背の老人は黒いシャツとズボンに白衣を羽織っただけの格好で小部屋に入ってきた。簡単な自己紹介をすると三人に向き合うようにソファに腰かけた。 「こんにちは。はじめまして。宮守渉です。葉月くんの話は聞いています。ユリアさんに陽介さんですね」 物腰丁寧に言って宮守博士は紙を取り出した。 「早速で悪いのですが、これが被害のあった施設の一覧表なります。五十の施設で実験動物が盗まれているのです」
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