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「これだけの被害を黙っていたんですか。信じられません」
ユリアが一覧表を手に呆れた。
「施設側が黙っていたからですよ。アカシアについてもノーコメントを徹底しています」
「その状態でよく、これだけのことを調べることができましたね。どうやったんですか」
陽介が興味津々と訊ねる。
「この五十の施設に関係しているのはゾンビを分解する薬の開発なんですよ。そこで実験動物だけが盗まれるというのは奇妙な話だといもいませんか」
「なるほど。データにはまるで手をつけていないというのはおかしなことですね」
陽介がメモを取る。
「五十の施設で同じことが起きていた。その被害をどこかに通報すれば研究所が危うくなる。それでみんな口を閉ざしていたのだが。数日前に平本博士の屋敷が大変なことになっただろう。そのとき溢れた虫の情報に被害にあった施設の人々が怯えて情報提供をしてくれたんだよ」
「え、平本博士の一件が何故、アカシアの情報提供の引き金となったのですか」
葉月は身を乗り出していた。
「平本博士と我々は、A305の研究を共にしていたんだ」
「平本博士は自殺や事故で死んだんじゃないってことですか?」
葉月は震える声を絞り出す。
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