四章 ヨトル街

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画面には爆発の瞬間から侵入までの経緯が映っている。 五人組が壁の穴から入ってくる。 薬指のない男を葉月は探す。 手袋を脱いだ男がひとり、ネズミのケージに取り付けてある鍵を解体した。 見事であった。 その男の薬指がない。 盗む前に監視カメラは壊された。その後の惨状は現場にある通りだった。 葉月は顔を見ようと必死だった。 「拡大して欲しい」 「申し訳ありません。薬指がないことを認識するまでが限界です」 「こっちで分析できたっけ」 葉月は陽介に聞いた。 「できると思う」 陽介が言った。 「コノハ研究員、画像を提出してもらえないだろうか」 葉月はコノハ研究員に申し出る。 コノハ研究員は快く承諾してくれた。 「少々、時間をいただきます。施設見学でもしていてください」 施設見学は資金を集めるために行われている。表向きの活動が並ぶだけの資料館があるのだ。退屈ではあったが複製を撮る間に葉月たちは施設を歩いた。 その間も葉月は映像のことを考えていた。 五人組のひとりは女の姿というよりは髪の毛の長い男という印象があった。 何故か一瞬そう感じた。 しかしそれは朧気だった。 確証はどこにもない。
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