四章 ヨトル街

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他のメンバーは背丈が低めだが体格が良かった。ものを運び出すには申し分ない。妙に背のあるメンバーもいた。しかし屈んでいたり、警戒していたりとしていたため身長に対しても錯覚の可能性は十分あった。監視カメラの映像だけでは多少のことしか分からなかった。 「アカシアの目的ってなんなんですかね」 陽介の一重瞼が瞬く。 「そうだな、データより動物を盗むって言うのは不思議なことだよな」 葉月はふと頷いた。 宮守博士がいっていたことだ。 データがなければ動物を盗まれても特に問題ない。 「盗まれたのは本当に動物だけだったのかな」 先を歩いていたユリアが疑問を投げた。 「どのみち捜査は必要だな」 葉月は平本博士のことを思い出す。 研究熱心な人だった。孤児を集めて資金を集めることを考えていたが暴力的なことはなかった。生活と研究を共有して孤児を見事に育てた。けれども隼人は平本博士のことを疑っていた。拓真も隼人と同じ考えだった。正直、葉月は二人を止めなかったことを後悔している。止められたはずだ。そう思うとやりきれない。平本博士の研究を覗き見ようとする二人を想像できなかったといえば嘘だった。しかしもう遅い。平本博士は死に、隼人と拓真は自分が殺した。
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