四章 ヨトル街

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葉月はぼんやりと上部だけの資料館を眺めていた。 簡単に気持ちの整理がつくならばくろうはしない。 上部だけの気持ちを背負うように葉月は資料を読んだ振りをする。 答えはアカシアという組織が知っている。 それだけ分かれば十分だった。 監視カメラの画像を貰った頃には太陽が傾いていた。 また無気味な月が昇ってくる。 宮守博士の部屋に戻って、画像の解析する。 陽介は解析を得意としているのだ。 ユリアは眠ってしまった。 葉月は辛抱強く解析の結果を待つ。その間、アカシアについての情報を探した。しかし進展がない。 夜になるとヨトル街は冷え込む。冬という季節に似てマイナス四度が夜の基本だった。地球の四季は消えてしまった。温暖化と言いながら平気で寒気が強い日もある。夏に雹が降り、大雨が冬に降る。気温も天候も一筋縄では計算できない時代だった。どれだけ防寒していても注意していても気候の変わり目を推測するのが難しい。 指先が悴んだ。あまりの寒さに葉月は毛布を被る。 「寒気が流れ込んでる。寒いっすよ今日は」 陽介は一枚上着を羽織った。 「上着を持ってくるんだった」 「足が寒い」 陽介は苦笑いを浮かべた。 「解析の方は?」
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