一章 生物兵器監査連邦

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話は少し前に遡る。 葉月実は生物兵器監査連邦本部の命令でミサと共に平本屋敷を目指していた。 ふたりが所属する生物兵器監査連邦と言う組織は、表向き政府の研究室を推進と研究者を支援する立場にある。しかしその裏では研究者たちの行き過ぎた研究を阻止する役目とその隠蔽作業を請け負っている。通報を受ければ隊員が出向き、異変の調査と称して原因を消す。それがふたりの仕事だ。 葉月が四駆車のハンドルを握り、移動速度をあげる。 四駆車が走る道は何処までものびている。太陽が真横に着いてくる時刻であった。 デッドラインと通称された道には建物が存在しない。二十世紀半ばにアメリカとドイツに紛争があり、日本も巻き込まれた。紛争は対には焦土を作り出して、世界を変えた。四十世紀と言う年月を経たいまでもデッドラインの復興はされていない。 デッドラインの先に街が見える。しかし一本の高層ビルが佇む街の足元にはプレハブが敷き詰められているだけだ。商店に住人の影は少ない。居ても老人か身寄りのない子供だけであった。 その街並みを通りすぎて数分、平本の屋敷が見えてくる。街並みが貧相であればあるほどなか庭付きの屋敷は映えた。ましてや、植物の枝葉が枯れ落ち、木の幹や土が異様な色に染まっていれば初見でも異変に気がつくだろう。 四駆車から降りて中庭に入ったふたりは奇妙な虫の大群に戦慄を覚えた。 「なんなの、これ」 ミサが虫を認識した。 傍らでは葉月が拳銃を取り出している。レーザーで虫を焼き払うつもりなのだ。銃器は生物兵器監査連邦の技術課が部隊に支給する。
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