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「嘘、なんでよ。この中に居るのってみんななの」
ミサが声を絞り出す。
ミサは平本の屋敷で十歳になるまで過ごしていた。
十歳のとき生物兵器監査連邦の誘いに乗り、屋敷を脱けた。その後、連邦の指示で平本の監視をしていたのだ。
科学者たちは、監視されていることを知らず、自分から救命要請を出すことがある。正直信じられないことであったが年に数回このようなことがある。その度に隊員が出向して確かめる必要があった。
「ミサ、俺がやるよ。このままだとみんなああなる」
葉月は持っていた手榴弾を扉に向かって投げる。
扉は木っ端微塵に吹き飛んだ。
壁が割れたような大きな音が響き、爆風が逆巻いた。熱風が肌を焼く。鼓膜が破けそうな大音響であった。
黒煙のなかで叫び声が蠢いた。炎が部屋を埋めていた。
死にきれなかった残骸がふたりへと向かってくる。
這いつくばった代物の伸ばした右腕にミサンガが付けられている。そのミサンガも炭となって落ちた。
「ああ、葉月か。ミサを頼むよ」
その声を最後に其は自らを炎に投げたのだ。
「隼人!」
葉月が彼女の手榴弾を取り上げる。
「こんな研究をしている輩の気持ちはわからねえよ」
手榴弾を葉月は部屋に叩き込み、ミサを引き摺るように部屋を離れた。
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