その来客は雨と共に

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閉め切ったカーテンの向こうで、たんたんと雨粒が部屋の窓を叩いている。 それがどれだけ脆弱な音色でも、無音の部屋にはよく響く。 ベッドに横たわっていた俺の睡眠を妨害するには十分だった。 相変わらずの、自分の眠りの浅さを呪う。 起きたばかりの半端な意識で上体を起こし、のろのろと伸ばした腕でカーテンの端を捲った。 窓には、無数の雨粒が透明な線を引いていた。 雫でぼやけた窓の向こう、空は今日も厚い雲に遮られているようだ。 時計を見なければ、朝だなんて気付かない。 それだけ感覚を狂わせる程の薄暗さだった。 最後に青空を見たのはいつだっただろうか。 ここ数日 梅雨でもないのに、こんな雨景色がずっと続いている。
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