863人が本棚に入れています
本棚に追加
シャワーを浴びて戻って来たリビングでソファに腰掛け、バスタオルで濡れた髪を拭いていた。
そうしていると、窓の向こうにいつもの来客が訪れた。
(…またか)
来客といっても、こちらは歓迎する気はない。
(毎日毎日、よく飽きないものだな)
閉ざしたカーテンの向こう、窓の傍でしきりに声を上げているその存在を想像して、小さな溜め息を零した。
ーー…少し前のこと。
その日も今日のように雨粒の大きい日で。
雨傘を差して出掛けていた、その帰りだった。
歩いていた道路の隅に、底を天にしてひっくり返ったバケツが置いてあった。
置いてあるだけなら意識しなかっただろうに、よく見ればバケツは小刻みに動いていた。
雨音に消えそうな、か細く高い声を発しながら。
最初のコメントを投稿しよう!