新しい朝はこんなにも

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収まらないもどかしさに駆られて携帯を手に取り、何度目かの時刻の確認をする。 もう22時を迎える頃だった。 けれど那月はまだ帰って来ない。 (……あ) 気を揉んでいたとき、そういえばと独り目を丸くして思い出した。 昨日が朝から夕方までの勤務だったのなら、今日は泊まり勤務になるんじゃなかったか。 それならどんな時間になろうと帰って来るわけがないし、帰って来るとすれば早くて明日の朝になる。 (…そうか、明日になるのか) 携帯を元の場所に置き、真っ暗な天井を仰いで深い溜め息を吐く。 なんだか無駄な労力を使った気分だ。 ーー会いたい。 不意にぽつりと、正直な言葉が脳裏に浮かんだ。 その瞬間、ひどく悲しくなった。 ないのだ、俺には。 彼に合わせられる顔がない。 乱暴に毛布を引っ張り、その中に自分を閉じ込めた。 身体を丸め、頭を押さえつけるように両手で抱え、きつく目蓋を閉ざした。 会いたくない。 どんな顔をすればいいのか分からないから。 会いたい。 今抱えているこの底知れない孤独感を拭えるのが、彼しかいないことに気付いているから。 二つの感情が、一つの胸の中でぶつかり合う。 一方へ傾かずに、延々と定まらないでいる状態が堪らなく歯痒くて女々しくて、自分が一層嫌になった。
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