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『あなたの感情は、本当に”悪”なのか』
『本当に、在ってはいけないものなのか』
脳裏に一色纏の言葉が浮かぶ。
苦く胸に焼き付いた彼のその問いかけが、記憶の中で延々と繰り返される。
(仕方ないじゃないか)
そんな彼の影に、俺は胸中で反論した。
知らないからそんな綺麗事を簡単に言えるのだ。
矛先が血の繋がった弟なんだと知れば、きっと軽はずみに俺の感情を肯定出来ないはずだ。
ならば消して忘れた方が良いと、頷くはずだ。
「……もう、嫌だ…っ」
俺はやっぱり異常な人間だ。
いくら誰よりも自分を見せられた相手とはいえ、実の弟にここまで依存するなんておかしすぎる。
普通なら家族愛やら兄弟愛やらで済むはずなのに。
俺はその枠組みでは収まらない感情を、那月に求めてしまっている。
自制も出来ないまま、ただ一方的に。
それのどこが悪じゃないと言うのか。
それのどこが在っていいものだと言えるのか。
自分を救ってくれた恩人を傍に縛り付けて、離れたくないからと未来の幸せも願えないのなら。
そんな感情、殺すべきに決まっているじゃないか。
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