新しい朝はこんなにも

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ノラを床に置いて、ベランダへと出た。 手すりに薄く積もった雪を、まじまじと眺める。 それから指先でそっと寄せ集め、両手のひらの上に掬い取った。 白衣と同じ色だからか不衛生な印象はなく、不思議と触れることに抵抗を覚えなかった。 もしくは、初めて間近で見たその純白の物体への好奇心が、汚れへの警戒に勝ったのかもしれない。 自分にも幼い感覚があることを、意外に思った。 雪はやはり冷たく、手のひらの体温が瞬く間に吸い上げられていく。 冷気で痛みを感じて持っていられなくなりながら、俺は掬った雪を窓の際にいるノラの傍に置いた。 「ぴゃ…!?」 まだ1歳を迎えていないノラにとって、雪は初めて見る代物だろう。 目の前に積まれた白い小山を、一層に丸くした目でじっと見つめている。 その間も俺は手すりから雪を掬い取り、小山に被せた。 「雪っていうんだ。おまえは見たことも触ったこともないだろ?」 ベランダにしゃがみ込み、冷えて赤くなった片手に乗せた雪を、ノラの傍へと持っていく。 こんな少量ですら、人の体温に負けずに形を保っている。 それが街全体に降り積もったともなれば、今朝の妙な冷え込みにも納得がいった。 「ぴゃあっ」 見ているだけだったノラが、おずおずと前足を出してくる。 興味津々で尻尾はしっかり立っている癖してへっぴり腰なところに、笑みを落としそうになるほど愛しさを感じた。
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