新しい朝はこんなにも

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「ぴゃぃー!」 雪にすっかり慣れたノラは、小山へと全身で挑んでいく。 頬を擦り寄せて形を崩し、その上に身をごろごろ転がせた。 自慢の黒毛が雪の残骸で白く染まるが、そんなこともお構いなし。 さっきまで寒さを拒絶して、俺の懐に埋もれて震えていたのが嘘のようだった。 人も猫も、幼い感性を持った子は雪に心が躍るものなのだろうか。 鼻先にまぶされた雪を指先で払ってやりながら、暫くノラを好きに遊ばせた。 けれど丈夫な雪も、散々弄ばれてベランダに広く散らかされるとさすがに耐えられないらしく、やがて透明の水となってコンクリートの中に染み込んでいった。 「ぴゃ…」 水に濡れたベランダを見渡して、ノラが立ち止まる。 「もうなくなったよ。おわり」 なんで? といった目で視線を寄越すノラに言う。 ノラは理解せず、さっきまで雪の小山があった所をぐるぐると歩き回った。 「ぴゃー、ぴゃー」 遊び足りないのだとでも言うように、ノラが濡れた足で俺のパジャマを上ってこようとする。 けれど手すりに積もっていた雪は粗方 掻き集めてしまったから、いくらねだられてもどうしようも出来ない。 弱ったなと、ノラを宥めながら首を捻る。 「ぴゃー!」 「……」 俺は根負けして溜め息を吐き、ノラの身体を抱き抱える。 そのまま一度、部屋の中へと戻った。
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