新しい朝はこんなにも

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ーー中庭のど真ん中に突如として佇む、雪だるま2つ。 ノラの一回り大きいくらいのサイズの彼らは、寒さと冷たさとの数十分の格闘の末、仲良く隣り合うように創造された。 那月と、雪を集めろと那月にこきつかわれた俺の手で。 (手、痛い…) しもやけを疑うほど赤くひりひりする手でノラを抱き締め、寒さに身を震わせる。 そんな俺を余所に那月は、 「これ僕!」 と言いながら一方の雪だるまに自身の眼鏡を取り付けている。 そのインテリだるまがお前だと言うのなら隣の雪だるまは誰だ、まさか俺か? 「楽しかったー、ね? 兄さんっ」 携帯でいくつか写真を取り、満足げに雪だるまを撫でながらこちらを振り向く那月。 「…そうだな」 実年齢よりも一回りもふた回りも下を思わせるその笑顔が屈託なさ過ぎて、俺は白く色付いた溜め息を吐いて色々な小言を飲み込んだ。 そんな充実した表情で楽しかったかと訊かれれば、頷くしかない。 …それに。 「意外と、楽しかった」 寒いし、手は冷え過ぎて痛いし、雪を集める単調作業はたしかに大変だったけれど。 俺だって彼と雪だるまを作っている最中、この作業時間が早く終わればいいのになんて、思わなかった。
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