新しい朝はこんなにも

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「兄さん、結局ここで何してたの?」 雪だるまから眼鏡を取り返した那月が、改めて俺に訊ねかけてくる。 そうして不思議そうにしている彼に、俺は両腕で抱えているノラを見下ろしながら答えた。 「ノラを中庭で遊ばせようと思ったんだ。ベランダの雪だけでは物足りなさそうだったから」 「へぇ、良かったねぇノラくんーっ」 「ぴゃあ~」 猫撫で声を出しながら、那月はノラの頭を指先で擽るように撫でる。 応えるノラも、ごろごろと喉を鳴らして嬉しそうにした。 懐に抱えて暫くあやしたお陰か、見知った人間に囲まれているからか。 ずっと不安そうだった態度も鳴き声も、大分と落ち着いたように思えた。 「…ノラ、さっきまでずっと愚図っていたんだ。それでせっかく連れてきたけどちっとも遊ぼうとしないから、もう帰ろうと思ってた」 「あら、そうなの?」 「ああ。外が怖いのかもしれない」 答えながら、金色の丸い瞳と目を合わせる。 その純真無垢な眼差しを見下ろして、ふと思い出した。 外で不安がるノラの姿を見るのは、これが初めてではない。 たしか桜庭の家に行ったあのときも、ケースから地面に降り立ったノラは、途端にしおらしい態度で鳴いていた。 「元は野良出身なのにな」 もうすっかり家猫だ。 動物の野生的な姿を失い、当然のように腕に収まっている無防備なノラを見て、俺は小さく苦笑した。
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