新しい朝はこんなにも

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車から見えていたゲートを潜ると、まず中庭らしき景色に迎えられた。 中庭は一本道になっていて、太く白い石畳が真っ直ぐに伸びている。 石畳の両側は青々とした芝生で埋め尽くされているが、緑一色の単調な景観にしないためにか、ヨーロピアン調の街灯を囲った赤煉瓦の丸花壇が点々と配置されていた。 もうこの時点で俺の見知った世界観とは違うのだが、それをさらに色濃ゆく実感させたのが、前方にそびえ立っている二つ目のゲートだった。 それはとても厳かな見た目で、まるで西洋の街の入り口を思わせるような、趣ある姿をしていた。 (こんなのが国内にあるのか…) 悠然として視界に広がり、大きく口を開いて物言わずに人を呼び込むその姿に圧倒される。 そうして立ち止まって見物していると、数歩先を進んでいたらしい那月に呼びかけられた。 「兄さん入るよー、置いてくよーっ」 置いていかれるのは非常に困る。 俺は遅れを取り戻すように、彼の元へと速足で進んだ。 「悪い」 「ここから先 結構人多いし、今みたいにぼーっとしてたらはぐれちゃうよー?」 再び隣に並び直す俺に、那月は呆れたように笑みを溢した。 「ああ、気を付ける」 戒めるように頷く。 冗談っぽく言う彼の言葉が大袈裟に思えなかったのは、ゲートの麓が既に人々で賑わい始めていて、近くにいるはずの彼の声ですら聞き取りが困難になっていたからだ。
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