新しい朝はこんなにも

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話を聞いた道化師は両手で顔を覆い、大袈裟に泣いているようなリアクションを見せる。 けれど直ぐにパフォーマンスを切り替え、タウンマップを片手に場を離れる俺たちを明るく見送ってくれた。 「兄さん、ピエロ怖いんだね」 ある程度離れたとき、那月はくすりと笑ってこちらを見た。 「得体の知れないものは怖いんだよ…」 「得体は知れてるよ。メイク落としたらただの人間じゃん」 「それは、そうなんだが…」 言い澱みながら、視線を逸らす。 那月の言っていることは正しい。 あの道化師だって結局、メイクを落とせばそこら辺を歩いている人間だ。 そんなものを怖がるほど馬鹿げた話はないだろう、でも。 「でも、やっぱり怖い。あれは無理だ」 何が怖いって、もう頭のてっぺんから爪先まで全部怖い。 まさか今になって、虫と同じくらい生理的に受け付けないものを知ることになるなんて思わなかった…。 「ははっ、そっかそっか。そんなに怖いのなら仕方ないね」 夢に出そうな形相を思い出し、かぶりを振って拒絶の意を露わにする俺を見て、那月は可笑しそうに笑った。
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