新しい朝はこんなにも

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「は…!?」 突拍子のない言葉に愕然として固まる。 次いでその一線を考えない冗談に怒りが沸いてきた。 「おまえ…!」 「ごめんごめんっ。怒らないでよーっ」 眉を寄せる俺を見て、那月は砕けた調子で笑う。 怒られているのに楽しそうな笑顔になっているところ、俺の反応が面白いのだろう。 そんな人間をまともに相手にするのは愚行だ。 分かっているのだけれど、それでもムキになってしまう自分がいた。 「調子に乗り過ぎだ…」 自分自身の矛盾がみっともなくて、ぶつける言葉の語尾も弱まってしまう。 …きっと、他の人間だったら俺はこうはならない。 相手が那月だから、俺は彼が嘯くこの手の冗談に腹が立ってしまうのだろう。 「ほら兄さん、機嫌直して」 険しい表情でいる俺に、那月はひとつ笑って言う。 そして性懲りも無く、俺の手を取った。 「おい、なんで…!」 「だって迷子になられたら困るしぃー」 引っ張られるようにして、雑踏の中へと歩く。 周囲なんて御構い無しの那月とは対照的に、俺は指を指されないかと気を揉んで、何度も人混みを見渡した。 「変に意識するから、周りにも意識されちゃうんだよ」 そのとき、不意を突くような言葉と共に、振り返った那月が俺に笑いかけた。 「堂々としていればいいんだよ。そしたら、こうしていることも自然なものに見えるから」 「……っ」 繋がれた手は固く、振り解くことも敵わない。 俺は何も言えないまま、再び前を向き直した那月の後ろ姿を見つめた。
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