新しい朝はこんなにも

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中世の街を模したこの施設には、ずらりと並ぶ店を始め、リヤカーを使った露店販売が至る所にあった。 ”どうぞ見て行って下さい” ”良い物揃えていますよ” それぞれのスタッフは自分の店の前に立ち、自慢の商品を店頭に並べて気さくに呼び込みをかけている。 そんな彼らは皆、中世を思わせる衣装に身を包んでいた。 服を売っている者も、アクセサリーを売っている者も。 食べ物を売っている者も、誰一人例外無くだ。 それがこの街のコンセプトなのだと、那月は教えてくれた。 いつか遠い昔にあったであろう、活気溢れる中世の街。 賑わう人々が入り混じり、織り成される祭のような雰囲気。 そんな景色を再現するために、この街は創られたのだと。 売る方も買う方も、中世の景観と共に商売を楽しめる場所なのだと、楽しげに説明してくれた。 「あれ見ていいっ?」 すっかり街の雰囲気に取り込まれている那月が、手当たり次第 目に付いた店へと俺を引っ張っていく。 中世を再現していると言っても、売られているものはアンティークから現代物までと幅広いジャンルを取り揃えているらしい。 だから掘り出し物を探すのもいいし、最新の衣服を買い揃えたっていい。 この街の雰囲気に身を任せて、普段は関心のないものに触れてみるのもいい。 精巧な景観の再現に加え、買い物の自由度も幅広い世代を魅了する一つなのだという。 今のこの、はしゃぎ回っている那月のように。 「これ良いよねーっ、買う?」 お前それ、サボテン型ミニランプとか本当に買う気か?
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