新しい朝はこんなにも

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それからも、俺と那月は街中を散策した。 那月はあれこれに興味を向けるが、俺を置いて行くことはしなかった。 どれだけ独りはしゃいで楽しんでも、俺を忘れることなくいつも視野に入れていてくれた。 だから俺は、夢中になる彼の目まぐるしさに着いていけた。 彼との会話や散策を、一緒になって楽しめた。 最初に繋いだ手を、ずっと解かずにいてくれたから。 冬空を忘れるような人混みの中、俺と那月のように手を繋いでいる人たちはたくさんいた。 それは親子だったり、夫婦だったり、恋人同士だったりときっと様々だった。 だけど互いに手を固く結び合い、仲睦まじく歩いているのは確かだった。 ”堂々としていればいいんだよ。そしたら、こうしていることも自然なものに見えるから” 那月にそう言われてからは、挙動不審にならないように心掛けていた。 だからか、誰も俺たちを気に留めることはなかった。 直ぐ傍を横切っても振り返って見直されることもなければ、遠巻きに観察されることもなかった。 それは周囲にとって、俺たちの姿が違和感ないということなのだろう。 那月の言う、”自然なもの”になれているということなのだろう。 「この歳になって、外出先で手を繋いで歩いている兄弟ってどうなんだろうな」 「大丈夫だよ。僕たちのこと、初見で兄弟だって分かる人なんていないから」 「…そうだな」 さっぱりとした笑顔で言う那月に、俺は曖昧な笑みで小さく頷いた。 たしかに容姿も雰囲気も殆ど似ていない俺たちはいつも、兄弟だと紹介する度に驚かれていた。 今も、俺たちを兄弟だと見ている人間はいないのだろう。 「……」 ーー那月は今、何を思っているのだろうか。 周囲のようにこうして手を繋いでいる俺たちはきっと、兄弟には見えていなくて。 だけど ただ仲が良いだけの友人同士としても、見られていないのだろうに。
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