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ーー洋風の扉を開くと、付属のベルがからんころんと鳴る。
控えめな照明で中は薄暗く、外装からは想像も出来なかったほど木々で溢れていた。
ふくろうの住処を思わせる、夜の森のようだった。
「…放し飼いなのか…?」
席に着いて、注文したドリンクを待ちながら周囲を見渡す。
とんでもないことに、ふくろうはケージに入れられておらず、人と容易に密接出来る位置で羽を畳んで寛いでいた。
「まぁ、ふくろうカフェだからね」
「飛んだらどうするんだ」
恐怖を含んだ声で訊けば、那月は何でもないように笑った。
「大丈夫だよ。一応、飛ばないように繋がれてはいるみたいだし」
「……だけど…」
あっけらかんと言われても不安は拭えず、落ち着かないまま再び周囲を見渡す。
すると直ぐ近くの枝に止まっているふくろうの凝視に気付き、全身が粟立つのを感じた。
「……さっ! 休んだし、そろそろ ふくろう見に行こうっと」
ドリンクを飲んで暫くも経たない内に、嬉々として那月が席を立つ。
重い気分ながら、俺も同じく立ち上がった。
「怖いならここで待っててもいいんだよ?」
「冗談じゃない…っ」
からかうように目を細める那月に、慌ててかぶりを振る。
繋がれているといっても、ケージに入れられていないのだ。
そんなふくろうがあちこちにいるこんなところで、独りで待っていられるわけがない。
那月の傍に着いていた方が、ずっと安心できる。
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