新しい朝はこんなにも

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そこそこの繁盛をみせる店内、那月は早速1匹のふくろうに近付いた。 白い身体と結膜のない真っ黒な眼を持つ、お面のような顔付きのふくろうだ。 こちらを見て、あらぬ角度まで首を傾げている。 「この子知ってる。メンフクロウだよ」 嬉しそうに言いながら、那月はまじまじと観察する。 「おい、そんなに近付くな、攻撃されたらどうするんだ…っ」 いつ嘴で啄ばまれるか分からない距離まで近付くものだから、彼に縋って纏わり付いている俺はひたすらに肝を冷やした。 「そんな怖がる必要ないってば。この子今も何もしてきてないじゃん」 服の袖を引っ張ってまで制止をかける俺に、那月は苦笑する。 そしておもむろに、俺に掴まれていない自由な手の方をふくろうへと伸ばした。 「こうやって、手の甲で背中を撫でるんだよ」 「…教えてくれてありがとう…、その知識を実践に生かすことはないけどな…」 お手本を見せるような那月に、俺は苦い表情で言葉を返す。 「もったいないなぁ、こんなに可愛いのにー」 那月は残念そうに笑い、最後にひと撫でしてふくろうから離れた。 ふくろうはまた、ぐりんと首を回す。 その最中、無表情の黒い瞳が俺を捉えた気がして思わず肩が跳ねた。 「……可愛いのかもしれないが、俺は怖い…」 物言わぬ眼力から目を逸らして、那月にしがみつく。 道化師といい、ふくろうといい。 前向きな感情を持てない俺は、やはり貧しい感性の人間なのだろう。 「もうちょっと小さな子なら抵抗感もなくなるかもね。ほら、あの子とか」 余裕ない俺の様子をおかしそうに笑いながら、那月が次のふくろうの元へと移動する。 そこに居たのはさっきのメンフクロウよりも随分と小さい、手のひらサイズとも言えるこじんまりとしたふくろうだった。
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