新しい朝はこんなにも

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ーー街の外へと流れる緩やかな波、それを形取る雑踏の中に、那月はたじろぐことなく踏み込んでいく。 沢山の人々の色々な声や表情、進行方向に目を回すことなく、率先して進んでいく。 そうして歩む道を拓いてくれる那月の背中を、俺は一歩後ろに続きながら静かに見つめていた。 はぐれないようにと繋ぎ止められた手の、心地よい感触を感じながら。 (…那月の手、やっぱり温かい) 真冬の、しかも陽が傾き始めている頃だというのに、彼の手にはしっかりと温度が宿っている。 それは誰かに分け与えられるほどの、人一倍の、才能のような温度だった。 …本当は嬉しかった。 楽しいもの、胸が踊るものへと導こうと引っ張るわんぱくな手が。 見知らぬ場所の慣れない雰囲気の中で、守るようにずっと繋いでいてくれた優しい手が。 周囲の目を気にする余りの気恥ずかしさや不安を忘れさせてくれるほどに、堂々と握ってくれた手が。 惜しみない体温と安らぎを与えてくれる彼の手に触れるのを許されたことが、嬉しくて仕方なかった。 ずっと、このままでいたかった。 ーーけれど俺はそれでも、彼の手を繋ぎ返すことが出来なかった。 「……那月」 「なに?」 「おまえさ、早く…いい人見つけろよ」
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