新しい朝はこんなにも

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「…私の気持ちが弟に知られて、気味悪がられて拒絶されるのも、異常だと他人に後ろ指をさされるのも…。それは私が傷付くだけだから、別にいい……」 歯痒さや悔しさ、自身の至らなさに掌を丸く握り締める。 短く切って整えているはずの爪が、皮膚に食い込んだ。 「……だけど」 ーー分かっていた、全部分かっていたから。 ずっと気持ちを、押し殺してきたのに。 「この想いのせいで、私のせいで弟の将来が、幸せが潰れたら…、私は…っ」 あの日、あの街で俺が浮かれてしまったから。 ”大丈夫”だと笑って手を引いてくれた彼の言葉に、俺が甘えてしまったから…! 「落ち着いてください、院長」 取り乱す俺を見て、一色纏が再び傍へと歩み寄ってくる。 背中に、労わるような手のひらがそっと充てがわれた。 「今の話はあくまで、”全てが周囲に露呈したら”の話です。今まで通り隠し通しておけば、あなたが危惧して恐れる未来が訪れることはありません」 目を両手で塞いで肩を震わせる俺の直ぐ傍で、宥めるような声が聞こえる。 「今この事実を知っているのは僕だけ…。つまり僕が何もしなければ、あなたもあなたの弟も平穏無事でいられるということです」 「…一色先生、どうか…っ」 ひどく優しい声色に俺は顔を上げ、柔らかな表情でこちらを見つめている彼に必死で懇願した。 「どうか、誰にも言わないで下さい。あいつは何も関係ないんです、あいつを巻き込むわけにはいかないんです。だからお願いします。お願いします…!」 無我夢中で縋り付き、細い悲鳴のような声で、何度も頼み込んだ。
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