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「ぴゃー…」
おそるおそると出てきたノラを、腕の中へと招き入れる。
そのまま俺はベッドから身体を起こし、怯えているノラに毛布をかけ直した。
そうしている内に再び、とんでもない騒音が鳴り響いた。
「ぴゃーー!」
これ以上にないほど毛布の中で蹲り、擦り寄って来ているノラを宥めながら、俺は縮こまって小さくなった身体を撫でた。
…昨晩からずっと酷い雷雨が続いている。
外はかなり荒れているようで、部屋の窓も風に騒々しく叩かれていた。
台風が近付いているわけでもないのに、こんな天気は久し振りだ。
「ぴゅうぅ…」
「大丈夫」
真夜中から繰り返している言葉を、また掛ける。
余りにも近い雷鳴に怯えて、ノラは起きて寝てを繰り返していた。
まともに眠れず、気の毒なまでに怯えているノラをどうにかしてやりたいが、自然が相手だとどうにもならない。
せめてもの思いでこうして腕に抱いて、傍で宥めながら撫でてやることしか出来なかった。
(……後1時間後ぐらいには仕事の準備を始めないとな)
ノラを撫でながら、ぼんやりと考える。
思考に霞が掛かっているのはきっと、ろくに眠れなかったからだ。
それはこの雷鳴のせいでもなければ、ノラのせいでもない。
胸元に赤く刻まれた、この印のせいだ。
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