新しい朝はこんなにも

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「…あなたも、雷雨が酷くなる前に帰った方がいいのではないですか?」 廊下を曲がって見えなくなる2人を見送る背中に、俺は愛想なく問い掛けた。 「…おや。冷たいことを言わないでくださいよ」 振り返った一色纏が、俺に向かって笑いかける。 杉崎と早川に向けた柔らかさと同じものながら、全く違う冷たさを湛えて。 「せっかくこうして、2人きりになれたというのに」 無遠慮に歩み寄って来て、髪を梳きながら頬に触れられる。 俺は顔をしかめて、その手を払い除けた。 「人目に付くような場所で不埒な真似はやめてください」 「なら、部屋に入れて下さい」 院長室の扉を背にして険しい表情を崩さず睨み付ける俺を、一色纏は何でもないように微笑んで眺める。 そして彼を振り払った俺の手首を、さらりと捕らえた。 「見られるのが嫌なのでしょう? 僕は平気ですがね? ここで何をして何を見られても」 一色纏は自身の口元へと、捕らえた俺の手の甲を誘う。 唇が触れるか触れないか、その間際に俺は再び力任せに彼を振り払った。 「……中へどうぞ」 鍵を開け、扉を開く。 そしてドアノブを握って部屋を開放したまま、俺は吐き捨てるように一色纏に言った。 「ありがとうございます」 背を向ける俺に、一色纏は礼儀正しく微笑む。 そして俺に続いて中に入り、音を立てないように扉を閉めると、内側から鍵をかけた。
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