857人が本棚に入れています
本棚に追加
「悪い、待たせた」
ほんの少しの申し訳なさそうな表情を装って、俺は那月のいるリビングに戻った。
「いいよー」
戻って来た俺に、那月は笑いかけてくる。
優しく身体をさすられているノラは、那月の腕の中ですっかり寝息を立てていた。
「その…、これを貰ったことを思い出してさ」
「なにこれ、どっかのお土産?」
「ああ、職場の人がくれたんだ」
「そうなんだー」
取り敢えず差し出した箱を受け取るやいなや、那月は包装紙を解き始める。
「おおっ」
そして包装紙を剥がされ明らかになった箱のデザインに、目を丸くした。
「カブトムシの幼虫型スナック菓子だってっ」
「えぇ……」
喜んでいる那月の横から箱を見て、顔を引きつらせた。
最低、悪趣味過ぎる。
どんなところに行ったらこんな趣向の手土産が売っていると言うんだ…。
「わ、見てこれ! 結構リアル!」
「…いい、見たくない…」
ずらりと箱の中に並んでいる内の1匹? ひとつ? を摘み、那月は子供のようにはしゃぎながらそれを俺に見せつけてくる。
無駄に特徴を捉えたその精巧な菓子は、見ているだけで鳥肌が立った。
最初のコメントを投稿しよう!