新しい朝はこんなにも

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「……」 不機嫌な表情で、語気を強めてはっきりと言う。 そうして憤る俺に、那月は少し驚いたように目を瞠った。 さすがの那月も怯んだのだろう。 鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしているが、謝るつもりはない。 俺がおまえの作ってくれるものを蔑ろにしていると疑った報いと知れ。 「……兄さん兄さん」 「なに」 「ちょっと僕の名前言ってみて?」 「はぁ? なん」 言葉を言い切る前に、会話を続けようとして開いていた口に何かが入ってきた。 ほんのりとキャラメルの甘い味がする。 そう思ったときには、口の中に放り込まれたそれを反射的に噛んでいた。 「美味しい?」 「………まぁ…普通に…」 良かったねと笑いながら、那月は5つ目のカブトムシの幼虫型スナック菓子を摘んだ。 ……なるほど、あれが今俺の口の中にいるのか。 「ははっ、兄さん鳩が豆鉄砲を食ったような顔してる」 俺の表情が面白いらしく、那月はけらけらと笑っている。 いつの間にか逆転している立場の優劣に、俺は呆気に取られて怒る気力もなくなっていた。 「兄さん僕のこと乗せるの上手すぎ」 一頻り笑って疲れたからか、溜め息混じりに那月は言った。 「唐突にそんなこと言うんだから困るよ」 「…困るってなんだ?」 「もっと料理頑張らなきゃなってこと」 「…俺は別に、おまえにプレッシャーを与えたいわけじゃない…」 後ろめたく感じて訂正すれば、那月はまた可笑しそうに笑った。
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