新しい朝はこんなにも

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ーー憂鬱な気分で埋もれるように潜っていた毛布から出て、ベッドから上体を起こす。 暖房に守られた部屋とはいえ、やはり今日も毛布から出るのが億劫な寒さだ。 もう3月の頭だというのに、未だ冬が去る気配はない。 加えてここ最近ずっと陽の光を隠している分厚い曇り空が、冷えに拍車をかけているのだろう。 早く春になって、過ごしやすい季節になってくれないものだろうか。 不毛に願いつつ、俺は身震いしながらベッドを出た。 リビングのカーテンを開くと、今にも雨が降り出しそうな灰色の空模様が広がった。 重く鬱々とのし掛かるような薄暗さに、気分が滅入る。 けれどその塞ぎこむような気分は、この空のせいではない。 ーーどれだけ拒んでも時間は待ってくれず、着々と日は重なって。 1週間なんてものはあっという間だった。 今日は迎えたくなかった、約束の日だーー。 早朝ということもあってノラがまだ熟睡しているからか、リビングに音を立てるものはいない。 精々 物静かな暖房の作動音くらいだ。 空虚な雰囲気の中で俺は明かりも付けず、カーテンの亀裂から射し込む澱んだ空の貧相な光だけを頼りに、コーヒーを淹れた。 起きるには早過ぎる時間、那月が帰って来るまでどう気を紛らわせようか。 カップに満たされた苦い味を、一口啜った。
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