新しい朝はこんなにも

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「こんばんは」 表情を緊張させる俺の傍らで、さっと那月が立ち上がった。 「初めまして、弟の美鷹那月です。いつも兄がお世話になっています」 好意的な笑みで挨拶をしながら、遅れて部屋に着いた一色纏を迎える。 「初めまして、こんばんは」 歩み寄る那月に、一色纏も同等の笑みを返した。 「一色纏と言います。今日は日々お忙しい中、僕の私情で急な約束の取り付けにも関わらずに予定を空けてくださりありがとうございました」 「いえいえそんな。兄から話を伺い、今日を楽しみにしていました」 「僕もです。あなたとお会いするのを楽しみにしていました」 互いに爽やかな態度で丁寧に接し合う。 「お疲れでしょう、どうぞ座ってください」 そのやり取りもほどほどに、那月は仕事終わりの一色纏を席へ促した。 「ほら兄さん、奥詰めてあげて」 彼が元いた席だった、俺の隣へと。 「失礼します。…院長、遅くなってすみませんでした」 謙虚な動作で俺の隣に腰を下ろしながら、一色纏は申し訳なさそうな笑みを浮かべてこちらを見る。 柔らかく細められた目元に、俺は身体が冷えるのを感じた。 「…いえ、お疲れ様でした」 労う気持ちを持ちつつも、当たり障りのない事務的な言葉をかける。 その傍らで那月が出入り口前の席に着くのを、俺は横目に意識していた。
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