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深く話し込む前に先ずはと、それぞれメニューを選び、呼び出した店員に注文を済ませた。
「この前はお土産をありがとうございました」
一足先に届けられた3人分のウーロン茶が座卓に並んでいく最中、那月が話を切り出した。
「いえ。クセのあるものを選んだので、気に入っていただけるか不安でした」
「あれ、有名な爬虫類カフェの店頭土産ですよね。あの手の店にはよく行かれるんですか?」
「はい。爬虫類も好きですが、一風変わったものに触れるのが好きでして。よく独りでふらふら遠出するんですよ」
「ああ、僕もそういうの好きです。お土産を見た瞬間も、絶対自分と趣向の合う人だと思っていました」
「ふふっ、それは嬉しい」
2人揃って話に盛り上がる中、先手を切ったのは一色纏だった。
「院長の弟さんであるあなたとはこの結び付けゆえ、これからも深く長いお付き合いをしていきたいと思っていますので。共通の趣味嗜好があるのは大変喜ばしいことです」
ーー好印象を与える笑みで、人聞きの良いことを言う一色纏。
その様を”隣”という間近で見て、俺は座卓で隠れた膝の上で手のひらを握り締めた。
「ねっ? 院長?」
「……」
そうして沈黙を続けていた俺の口を開かせようと、一色纏は柔らかい笑みを向ける。
彼の言葉に頷くことを…、那月を前にして彼との縁を認めることを強いられているのをひしひしと感じ、この場から逃げ出したくなった。
「兄とは、いつ頃から付き合い始めたのですか?」
那月が踏み入るように一色纏に訊ねたのは、俺が何かしらの反応を示す前のことだった。
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