新しい朝はこんなにも

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『おやすみ』 早々に部屋へ向かう俺の背中に掛かった、那月の声。 俺は返事をしなかった。 振り向かないまま小さく頷くだけの、邪険な態度で済ませてしまった。 体調を心配してくれている弟に対して最低な接し方だと思う、けれど。 今はとにかく那月の顔を見たくなかった。 那月の声を聞きたくなかった。 傍に彼の存在を感じているのが、ひどく苦痛だった。 ”いい人見つけたんだなって思ったよ” 一番聞きたくない言葉を、一番言ってほしくない相手に言われる。 それは、心臓に大きな穴を空けるような痛みだった。 「…悪いのは那月じゃない」 目蓋を閉ざし、小さな声で呟いた。 「悪いのは那月じゃない」 毛布を頭まで被り、何度も呟いた。 「悪いのは、那月じゃない」 意識が微睡み、眠りに落ちるまで呟いた。 ”信じてたのに” ”おまえだけは、ずっと味方でいてくれると思っていた” ”気付いてくれると、思っていた” ”どうして? 那月…” 「…悪いのは、悪いのは…っ」 ーー彼を責めようとする自分を戒めるために、絶えず呟いた。
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