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目蓋をきつく閉ざして身体の不調に耐える俺を押さえ付けたまま、一色纏は片手で器用に自身のネクタイを解いていく。
「…!?」
そのネクタイはするすると速やかに俺の両手を囲い捕らえ、抵抗を抑制する一本の拘束具となった。
「ネクタイなので少し心許ないですが…。まぁ、あなたになら十分効果を見せてくれるでしょう」
拘束された両手をさらに頭の上でベッドに押さえ付けられ、自由を奪われる。
そうして無防備を強いられて動揺する俺の姿を、一色纏は改めて見下ろした。
「な、何を…っ」
「何を、ですって?」
警戒を露わにして問う俺に、顔を近付け覗き込む。
まるで能面を思わせるような冷たく無表情な様に、背筋が凍り付いた。
「わざわざ言う必要がありますか?」
そんな俺から視線を外さず、一色纏は淡々とした声で答えた。
「ここまでされて全く分からないほど、あなたもウブではないでしょう?」
抵抗出来ない俺のシャツのボタンを、上から順にひとつずつ解きながら。
「や、やめろ…!」
ーー燻っていた不安が堰を切る。
身を脅かす恐怖に、俺は悲鳴を上げた。
どうにか身体を反転させて背中を向け、一色纏の指先を拒絶した。
「そんなに暴れると身体に障りますよ」
両手の自由が効かない中で身を捩り、どうにかベッドから起き上がろうとする俺を、一色纏は背中から押さえ付けた。
二度は許さないと言わんばかりに、俺は強くベッドに縫い付けられる。
「誰か…っ、誰か!」
「こんなところに誰も来ませんよ」
背後からベッドへと押さえられ叫ぶ俺に、一色纏は冷静な声で言う。
そしてうつ伏せに組み敷かれ、シーツに密着している俺の前部に手のひらを滑り込ませると、難なく全てのボタンを解いた。
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