新しい朝はこんなにも

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全部話せば、助けてくれるか? 全部話せば、信じてくれるか? ーー……。 『一色先生って患者のこともスタッフのこともよく見てますよね』 『いやぁ、2人が仲良くしているのを見ると嬉しくってねぇ』 『スタッフや患者さんとのコミュニケーションも上手だし、努力家で真面目で本当に優秀な子だ』 福留さんを始め、スタッフは口を揃えて言う。 あの人は信頼出来る人だ、と。 『あの人は大丈夫だよ」 『いい人見つけたんだなって思ったよ』 そして、信頼していた那月すらもーー。 「……言いたいことなんて、何もない」 「嘘」 「……」 見透かすような瞳が俺を見つめる。 だけどそれがはったりだと分かった今、動揺も感じずただ苛立つだけだった。 嘘、と真っ直ぐ射抜くこの目は、どうせ何も見えていないのだ。 皆と同じように、表面しか見ていないのだ。 …那月、きっとおまえも、一色纏を支持するんだろう? 「そうやって何でも塞ぎ込むから過労で倒れたりするんだよ」 「うるさい!」 だったらもう、放っておいてくれ!! 「知ったような顔で知ったような口を利くな!おまえに何が分かるんだよ!」 中途半端に踏み込んで、俺に希望を持たせないでくれ!! ナイフで突き刺すような言葉に、部屋が静まり返る。 柄になく声を荒げた俺に、那月は微かに瞠目した。 「僕じゃ駄目なら、信頼出来る人を頼りなよ」 けれどその沈黙を待たずに、もう一度口を開いた。 「あなたにはもう、自分を受け容れてくれる人がいるじゃないか」 いじけたわけでもなく、嫌味でもなく、那月は静かに言った。 その言葉に俺は声すら出せなくて、会話はひっそりと収束に向かったーー。
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